武川 篤之
認定NPO法人日本アレルギー友の会 理事長

患者支援者としての提言

日本の医療

世界に冠たる国民皆保険制度が我国で昭和36年に発足し、本年で61年経過している。
当時は国民の3分の1に相当する 3000万人が無保険でしたが、貧乏と病気の悪循環を断ち切ろうと、新たな国民健康保険法を制定した。
そして、日本の健康寿命は飛躍的に伸び、2021年世界保健機構(WHO)が発表しているデータによると、日本の健康寿命の平均は男女とも世界一であるとしている。

日本の医療制度の特徴

国民皆保険は、ほぼすべての医療が保険で支払われている、保険料は所得に応じるが医療の給付に制限はない、医療施設は自由に選択利用できる等。

現状認識

しかし、急速な人口の高齢化、医療の高度化、遺伝子診断・治療、個別化医療等による医療コストの増大を続ける一方、経済基調の変化に伴い医療費の伸びと経済成長との間の不均衡が拡大し、加えてCOVID-19禍と、このままでは国民皆保険制度そのものが崩壊する可能性があると指摘されている。
また、医療は『公共財』.医療側,患者側とも,無制限な自由,無秩序な利用は許されない」との指摘もある。こういった点を踏まえて、医療財源の確保、医療の質の向上、医療提供体制の最適化、DX化など多くの課題がある。 国民が何よりも重視し、大きな不安を抱えている医療分野において政策立案また改革推進を考えることが喫緊問題と考える。

対策および目的

生命と個人の尊厳を守るべき医療において、患者の自費負担額が大幅に増大することなく、経済的弱者を切り捨てる政策とならない、質の高い医療を平等に提供することができ、誰もが安心して受診できる国民皆保険制度を堅持でき、医療を必要としている人たちの声が十分に反映されるようなしくみを作り、実効性のある医療政策を実現したい。

“私たちの結束が重要”
日本の医療を動かす!
巨大な医療が動かせるの、動くはず無いのでは?との思いでしたが、実践してみました。
先ず、動かすには動かす仕組みを知る事。次は、動かす人となるべき資質を身に着ける事が求められます。それを可能とする仕組み、そして様々な疾患に罹患している人達と協働すること。 さすればきっと動きます!「皆で輪を作り、動かしましょう!」

医療政策立案に患者・市民が参加する意義

  1. 医療政策の立案、実施、評価に患者・市民が参加することは民主主義の基本である
    とともに、患者中心の医療を実現する必要条件でもある。
    (北米、英国、欧州、豪州などでは以前から患者・市民の参加がみられている。)
  2. 医療政策への患者参画は、医療政策上の優先課題を選定したり、現行の医療制度の
    課題や解決策を見出すうえで、自らの疾患と治療を実体験している患者だから貢献できる。
  3. また、医療提供体制の改善、社会全体の健康増進や医療資源の有効活用にもつな
    がる。
  4. そのためには形だけの市民参 加ではなく、医療を必要としている人たちの声が
    十分に反映されるような仕組みを作り、 実効性がある形に発展させていくことが求められる。

2022年3月25日

【参考】

  1. アレルギー疾患対策基本法は2015年に施行され、アレルギー疾患対策推進協議会が2016年2月~12月に9回開催され、同基本指針は2017年3月策定された。
    患者委員3名 患者委員が当日の資料配布を含め積極的に発言し、問題提起し、十分な審議が行われ、医療提供体制や適切な情報提供等が基本指針に反映された。
  2. 患者参画の意義の追加として「多岐にわたる課題を解決する術を考える」
    人間は皆、認知バイアスを持っている。これは、専門性が高くなればなるほど、私たちの脳が効率化を図るためにその範囲外のことを無意識に排除する現象です。
    認知バイアスを知り、多様性をいかに活かすかに注目しています。多様性があるからこそ、これまで見えなかったものが見える、課題の解決に繋がるのです。
    人と意見が食い違った時、同じ専門家同士であれば意見を戦わせればよいのですが、相手の専門が違う場合、「相手は自分が見えていないものを見ている」ということに思い至れるかどうかが大切になります。無知の知こそが自分の認知バイアスを超え、新しい価値が生まれる。

【引用文献】

  1. 小松康宏 群馬大学医学部教授
  2. 白坂成功 慶応義塾大学大学院システムマネジメント研究科教授

2022年4月4日掲載