藍澤 正道
日本難病・疾病団体協議会 副代表理事
全国パーキンソン病友の会

患者目線の医療政策を実現するものは

一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)は、難病や長期慢性疾患の患者会と都道府県の難病連等約100の団体からなる全国組織です。難病は海外でも「Nan-byo」として定着しつつありますが、もともとの英語は「intractable disease」、難治性で、手に負えない病気という意味で、現状は、少ない専門医、診断確定までの平均期間が長く、治療法があるのは全体の5%未満程度、生涯に渡る医療的ケアが必要で、治療費の負担も大きく、少ない知識や情報のために、患者は社会から孤立しやすく、福祉の施策からも対象外と見られやすいという状況にあります。

難病法の医療費助成の制度

難病は、その確率は低いものの一定の割合で発症することが避けられず、国民の誰もが発症する可能性があるため、難病の患者及びその家族を社会が包含し、広く国民の理解を得ながら支援していくことが必要であるとされ「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が2014年に制定されました。難病法では「発病の機構が明らかでない」「治療方法が確立していない」「希少である」「長期の療養を必要とする」という4つの要件を満たす疾患を「難病」と位置づけて、難病患者の医療と福祉を実現するために、①難病の医療に関する調査及び研究、②医療費の助成、③療養環境の整備を制度の柱としています。なかでも、治療費の負担が大きい難病患者にとっては医療費の助成は重要で、具体的には、患者数が人口の0.1%程度を超えない疾病(指定難病)の患者さんで、その重症度が一定程度以上である場合に医療費が助成されます。2015年の制度発足当時の日本の推計総人口は12,700万人ですので、その0.1%の127,000人を超えない患者数(医療費助成受給者数)の難病が助成対象ということになります。実際には“程度”ということで、0.15%程度の18〜19万人程度までが許容範囲とされています。法施行時から医療費助成を受けていた疾病(指定難病)で、患者数が最も多かったのは潰瘍性大腸炎(166,085人)、次がパーキンソン病(121,966人)でした。重症度の基準適用猶予の3年経過後の2019年度末の数字ではそれぞれ、126,603人と135,152人になりました。重症度による基準において、難病法成立前の特定疾患の時代に重症度の基準が設けられていなかった潰瘍性大腸炎では、施行後3年間の経過処置が終了すると、重症度基準が厳格に適用された結果、一挙に39,000人もの患者が助成対象から除外されてしまいました。2番目に患者数の多かったパーキンソン病は、患者数が一番多くなり、難病法の5年見直しにおいて、その重症度分類基準が、他疾患との公平性や制度の持続性の名の下に改変される可能性が取り沙汰されているところです。

パーキンソン病の患者が求める治療薬

パーキンソン病は、イギリスの医師ジェームズ・パーキンソンが1817年に初めて報告した病気で、報告者にちなんでパーキンソン病と呼ばれるようになりました。パーキンソン病も難病法の対象疾病でありますが、報告から200年たった今でも根本的な治療法が開発さていない難病です。近年iPS細胞移植治療や遺伝子治療など有望な治療法の研究も治験の段階へ進展していますが、まだまだ服薬による対症療法が主要な治療方法となっています。パーキンソン病は、進行性のため、5年ほど服薬すると、薬でもコントロールが難しい状態となります。症状が進行した多くの患者は、一日の中で何度も、ウエアリング・オフ(薬が効かない状態)になります。オフの状態は突然現れることもあり、例えば電車の乗っていて、降りるべき駅で身体が動かないことや、横断歩道上を歩いている途中で突然動けなくなることもあります。このような病状を改善する良い薬が海外で承認されていて、オンの状態がより長く持続されてQOLを大幅に改善することができるため、日本でも多くの患者が一日も早く使えるようになることを切望しています。神経内科医の学会からも日本での早期承認に向けて要望書が数年前に出されている薬です。しかし、日本では、承認されても設定される薬価が極めて低くなることが予想され、製薬会社が多額の開発費用を賄えず、開発に踏み出せない状況となっています。

患者目線の医療政策を実現するために

難病や希少疾患、長期慢性疾患の領域では、患者の願いや目線と異なる制度となった結果、制度の壁を超えられない例、あるいは制度間の谷間に閉じ込められてしまう例など、潰瘍性大腸炎やパーキンソン病に限らず、多くの疾患で起こりやすい状況にあります。国の政策や、法律、制度は、医療の分野に限らず、当事者の願いだけでは決められないことは理解できます。そこには、社会的な状況や、政策の方針、財政の状況、公平性や制度の持続性など多角的な視点が求められます。したがって、患者も、救済を求めて待つだけでなく、当事者としての多角的な視点と問題意識を持ち、個別患者会の枠組みを超えて意見集約と問題提起や提案を行い、医療と福祉の課題解決に主体的に参画していかなければなりません。そのためには、PPCIPの取り組みは一つの大きな役割を担うものと期待しています。

2022年3月28日掲載