中川 圭
認定NPO法人
乳がん患者友の会きらら 理事長 

患者が声をあげ続けること~コロナ禍の今だからこそ~

私たち「きらら」について

 私は2000年の夏、42歳の時に乳がんに罹患し、入院当時知り合った患者仲間と情報共有を目的とした自助グループを立ち上げました。それが現在、広島県内のがん患者支援団体としては唯一の「認定NPO法人」である「乳がん患者友の会きらら」の始まりです。自身が患者となった時に、科学的根拠に基づいた情報がいかに重要であるか、また同じ病気の体験者の存在にどれほど勇気づけられるかを、身をもって体験したことがきっかけで、自然発生的に立ち上がった活動が22年続く形となりました。

難治性乳がんをご存じですか

 さて、私は初発から1年半くらいの時に、肺やリンパ節などに多数の転移巣がみつかった再発患者です。現在の医療では、私のような遠隔転移した乳がんは、ほぼ完治は望めず、治療の選択肢がどれだけ残されているかということが、私の余命と大きく関わってくるのです。

 ところで、乳がんには大きく分けて3つのタイプがあり、タイプによって治療法が異なります。なかでも乳がん全体の約15~20%を占めるトリプルネガティブ乳がんは、他のタイプと比較して再発率が高く、再発後は急速に進行し生存率も低いのですが、薬の選択肢は多くありません。また、乳がんの5%~10%は遺伝的な要因が強く関与して発症していると考えられています。その中で最も多くの割合を占めるのが遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。HBOCの方は、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんなどの発症リスクが高いことがわかっています。

難治性乳がんサポートプロジェクト UPEACH

 乳がんは、日本女性の9人に1人が生涯のうちにかかるといわれており、前述の進行・再発リスクが高い「難治性乳がん」と闘う人も少なくありません。乳がん全般への理解は高まり、治療が発展を続ける一方、「難治性乳がん」に対する理解は十分とは言えず、治療の選択肢も限られています。そのような課題を解決すべく、昨年、全国各地の乳がん患者をサポートする団体などに呼びかけ、「難治性乳がんサポートプロジェクト UPEACH(アッピーチ)」を立ち上げました。私たちは、乳がんに関する正しい知識を普及することにより、難治性乳がんへの理解を深める必要性を強く感じています。そのために、乳がん患者支援団体はもちろんのこと、他臓器のがんの支援団体とも連携し、広く市民に呼びかけ、解決すべき課題について、医療者、行政、医療関係企業などを含めた様々なステークホルダーと協業して広く問題提起し、問題解決に取り組みたいと思っています。

患者が声をあげ続けること

 このコロナ禍の数年で社会そのものが大きく変わり、医療の在り方への国民の関心が高まった今が、医療改革の大きなチャンスであるのかもしれません。国民自身も長期的な視点に立って、自分たちの命を守るために何を優先すべきなのかの議論を深めなければならない時だと考えます。だからこそ、私たち患者団体は、他のステークホルダーと連携したうえで、声をあげ続ける必要性があるのだと強く感じています。

2022年3月16日掲載