ワーキンググループについて
私は今から14年前に若年性アルツハイマー病と診断されました。2004年ごろから認知症という言葉が新しくできましたが、以前は痴呆といった言葉で呼ばれていたためか、認知症のある人々への偏見が強かったように思います。認知症は介護や高齢者の問題と捉えがちですが、人権全体に関わる問題だと考えています。私が診断された頃は若年性認知症に対する周囲の理解も少なかったため、若い人でもなりうることを知ってほしい、認知症になってからも尊厳を持って暮らせるよう社会を変えていきたいとの思いを持ちました。海外ではすでに、施策に影響を与える意見を出す団体として、認知症本人によるワーキンググループがあり、認知症本人が自ら発信していました。日本でも同様の活動ができないかと考え、認知症とともに生きる人が希望と尊厳を持って暮らせる社会に変えていくことを目的に「日本認知症ワーキンググループ」が立ち上がりました。その後、活動を発展させるために一般社団法人化し、名称を「日本認知症本人ワーキンググループ」と改め、全国各地で認知症本人たちと、活動の目的に賛同するパートナーの方たちと一緒に活動を行っています。
今後も本人ワーキンググループの代表理事として、認知症本人として、発信を続け、認知症とともによりよく暮らしていくことを仲間と意見交換しながら、認知症になってからも暮らしやすい社会、自分らしく生きていくことができる社会の実現に向けて活動をしていきます。
認知症の本人が声をあげること
認知症施策推進大綱が2019年に策定されました。介護する側の負担軽減のための施策は徐々に整ってきていましたが、大綱においては共生と予防を車の両輪として、本人が社会の中で暮らしやすくなるための視点が多く取り入れられたように感じます。私自身も本人ワーキンググループの代表理事として様々な機会に、本人の立場からの意見を述べてきました。よりよい社会づくりのためには、さらにたくさんの本人たちの意見を聞く場が必要と考えています。
認知症といっても様々な病気・症状があると思いますので、できるだけ多くの本人の意見を取り入れていただけるような仕組みや場が必要だと思います。また、意見を聞くだけではなく、それを踏まえて今後どうしていくのか、議論ができれば、よりよい社会づくりの活動につながると考えています。
認知症を取り巻く環境について
現在、様々な製薬会社がアルツハイマー型認知症治療薬の開発に着手しており、多くの報道も出ています。アルツハイマー病のご本人、ご家族の皆さんはもちろん期待をしていると思いますが、きちんと生かされる環境も必要だと感じています。認知症の症状、アルツハイマーという病気を持ちながら暮らし続けることを、医療機関・国民が十分に理解することで、隠すことなく治療できる環境、自分に有効な薬を選択できる環境、自分らしく暮らしていける環境を周りの皆さんとともに創出していくことが必要だと思います。
「病気だけを見るのではなく、人を見る」 この考えが大事なのではないでしょうか。
2022年1月26日掲載